帝国日本の生活空間
衣食住や家具、都市空間、身体の振る舞いに目を向け、日本が植民地帝国だった時代の日常生活と文化に迫る。洋館と上流階級、室内装飾の見せ方、グルタミン酸ナトリウムの普及、籐家具の伝播、「文化生活」言説など、人、もの、知識の流通回路を通じて、帝国が引き起こしていた不平等な出会いと差異の構造を探る意欲的論考。
■目次
・序章 帝国の回路と非対称な出会い
イデオロギーの見地からみた帝国の回路と出会い
人と知識の流動
植民地近代、帝国近代、ポスト植民地の責任
・第1章
「洋館」の飾り方・住まい方 明治上流階級の趣味は「オリエンタリズム」だったか
媒体、秩序化の原則(天皇の棚、天皇の靴)、三つのオリエンタリズム
フレームを埋める、おわりに
・第2章 「味の素」 味覚の帝国とグローバリゼーション
風味と帝国、大衆向けの工業的栄養源、グルタミン酸ナトリウムと日本の主婦
大日本帝国、中国大陸、華僑におけるグルタミン酸ナトリウム
「グルタミン酸ナトリウムを食べると、頭がよくなる。」
危機と反応 「ウマミ」の再発明、帝国の後味、食品科学と食品文化
・第3章 紳士協定 1908年、環太平洋の人の動き、ものの動き
はじめに、紳士協定 太平洋史への断片
・第4章 世界文化を夢見た「文化住宅」
一つの世界文化という理念、文化生活と帝国秩序
イコンとユートピアとしての文化住宅、現地の反動と民族的なヒエラルキー
文化の価値低下、植民地における「文化」
・第5章 藤椅子に座る熱帯帝国
姿勢と権力、熱帯の繊維を家具にする、「酔翁」西洋人と熱帯家具
床座の帝国主義者 植民地台湾の日本人
熱帯の混淆 内地と植民地における三越型藤椅子
補論 アメリカ軍事帝国における「パパサン・チェア」の歴史仮説
日本の植民地的感性についての結論
・第6章 「生蕃」が街を歩いた 東京はいかに「帝都」であったか
東京における帝国の誇示、旅行者の行程、「内地観光」と文明化の宿命
おわりに エチケットの帝国
・終章 帝国の狭間のハワイと沖縄
著者:ジョルダン・サンド、天内大樹
出版社:岩波書店
サイズ:A5
ページ数:274
発行年:2015.10
