カンチレバーの椅子物語 日本における開発と普及を中心として
鋼管性カンチレバーの発案者は本当にブロイヤーだったのか?
1930年代に誕生し、5年程で(現在見られる基本的な構造と意匠が出尽くしてしまったと思われるほどの勢いで)、先進国の社会に取り込まれていった、カンチレバー構造(片持梁構造)の鋼管椅子。本書は、その定義、誕生に関する通説の再考、戦前期のデザイン展開、戦後における変遷を考察し、日本での開発・発展・普及、また異素材での開発など、多方面からカンチレバーの椅子を考察する。最終章には、設計から組み立てまでを紹介。
■目次
・1章 カンチレバーの椅子に関する定義
1 cantileverの表記
2 カンチレバー構造の椅子を規定する
3 複雑なカンチレバーの要素を持つ椅子
・2章 鋼管製カンチレバーの椅子誕生に関する通説を再考する
1 これまでの誕生に関する通説とその問題点
2 先行するブロイヤーのワシリーチェアとの関連性
3 スタム、ミース、ブロイヤーのデザインと、その関連性
・3章 日本における鋼管製カンチレバーの椅子の開発
1 日本金属加工株式会社による開発
2 横浜船きょ株式会社による開発
3 型面工房による開発
4 東京建材工業所による開発
5 日本ステンレス株式会社
6 その他の企業の可能性
・4章 日本の戦前期における鋼管製カンチレバーのいすの普及
1 雑誌の記事から見る普及時間
2 関東が先か関西が先か
3 住宅での普及
4 公共的な建築での使用
5 ホテル、百貨店、劇場、ゴルフ場での使用
6 ダンスホール、喫茶店等での使用
・5章 積層材によるカンチレバーの椅子の開発と普及
1 リートフェルトのデザインとその影響
2 アアルトのデザインによる積層木材製カンチレバーの椅子
3 アアルトの積層木材製カンチレバーの椅子の流行
4 日本における竹積層材製カンチレバーの椅子の開発
日本における木製カンチレバーの椅子の研究
工芸指導所における竹の活用政策
工芸指導所における竹材を使用した椅子の研究
竹積層材製カンチレバーの椅子の開発)
5 ペリアンによる竹積層材カンチレバーの椅子のリデザイン
6 竹積層材カンチレバーの椅子の普及
・6章 戦前期のカンチレバーの椅子に関するデザイン展開
1 海外におけるデザイン展開
タトリンの設計した椅子
ブロイヤーの設計した椅子
ミース設計した椅子
ルックハルトの設計した椅子
エミール・ギヨとポウル・ヘニングセンの設計した椅子
イギリスの風刺画に見るカンチレバーの椅子)
2 山脇巖の鋼管家具に関する形態分析
3 輸入品かそのコピー製品の椅子を用いた建築家
4 独自のデザインを施した椅子を用いた建築家
石本喜久治の場合/土浦亀城の場合
・7章 戦後におけるカンチレバーの椅子に関する変遷
1 戦後における起居様式と椅子
2 進駐軍への鋼管椅子納入
3 日本人に忘れられた時代
戦後に流行した椅子
カンチレバーの椅子は忘れられていたのか
4 海外輸入品による復活
デザイン運動を通したカンチレバーの椅子の再評価
輸入家具の増大とカンチレバーの新たな椅子の登場
5 戦後の本格的な復活と全国的への普及
停滞する国産カンチレバーの椅子のデザイン
国産カンチレバーの椅子のデザイン展開
日常の生活に見るカンチレバーの椅子の普及
6 世界中で使用されるカンチレバーの椅子
・8章 鋼管製カンチレバーの椅子をつくる
1 カンチレバーの椅子設計に関するコンセプト
何事も一人ではできない
椅子と起居様式との関係
コンセプト
2 設計と製図
全体の構造/鋼管の選定/ディテールの検討/製図
3 加工及び組立て
鋼管を曲げる/曲げた交換を組みたてる
クッションの製作と取り付け
4 完成したプロトタイプの検証
・あとがき
著者:石村眞一
出版社:角川学芸出版
サイズ:A5
ページ数:271
発行年:2010.03
