反歴史論
今も「歴史」や「歴史観」は世間に強い感情を呼び起こし、激しい闘争の原因になっている。文化も文明も技術も、制度も慣習も言語も、今あるものはすべて過去に作られた歴史の産物であり、歴史から完全に逃れて考え、生きられる人など一人もいない。
本書は、この歴史による支配がいかにして起きるのかを解明し、歴史から自由になることはできなくても、歴史の支配から自由になる可能性はあることを示そうとするものである。
■目次
第1章 反歴史との対話
歴史の恥辱、小林秀雄と「反歴史的概念」
さまざまな歴史の歴史、人類学と引き裂かれた意識
自然と構造、歴史のパラドクス
イエスを反復する、強い歴史、弱い歴史
歴史の欠乏と過剰
第2章 無意識・映画・存在論-思考しえぬものの思考の準備
思考を脅かすものについて
思考の異物?、哲学の批評
小林秀雄と映画、純粋な起源との親密性
冥界の小林秀雄に
II 精神分析と存在論のあいだ
自然は対象化されない、あるいはマルクス
存在論と自然とテクネー
無意識と対象化
III イメージ空間について
映画の両義性とベンヤミン
シュルレアリスムとファシズム
IV 幸福あるいは消尽
アルチュセールの異化
弁証法と至高性
終焉と「到来しないもの」
第3章 歴史のカタストロフ
歴史を引き裂く時間
歴史が「繋留」であることについて
歴史のカタストロフィックな経験
自同性は構成されなければならない
第4章 流れと螺旋
『司馬遷』の歴史
『レイテ戦記』の歴史哲学
流れの地図
フーコーの歴史批判
著者:宇野邦一
出版社:講談社
サイズ:文庫
ページ数:296
発行年:2015.04
