建築家・松村正恒ともうひとつのモダニズム
松村正恒という建築家がいた。
戦後間もない愛媛県八幡浜市役所の一職員として、珠玉の学校建築や病院関連施設を設計した人物である。モダニズム建築の思想に拠りながらも教条的な姿勢はとらず、教育や生活のあるべき姿を空間化した。1960年には『文藝春秋』の特集「建築家ベストテン」で、前川國男、丹下健三、村野藤吾らとともに日本を代表する建築家にも選ばれている。松村が提起した多くの問題や枠組みは、これからの建築のあり方を構想するうえで、依然として有効な射程をもっているといえるだろう。本書は、松村とその建築に関する初の本格的論考である。
■目次
・序章
本書の目的と課題/既往研究との関係/本書の構成と要旨
・第一章 松村正恒の原風景
誕生から大洲時代まで/東京での学生生活/土浦亀城建築設計事務所時代/農地開発営団時代/まとめ
・第二章 八幡浜市役所における建築設計活動
八幡浜市役所での設計活動の背景と作品リスト/八幡浜市役所時代の作品リストと分析方法/第一期・旧来のシステム内での抵抗/第二期・新しい建築的ヴォキャブラリーの実践/第三期・松村スタイルの完成/八幡浜市役所時代の建築作品の変遷のメカニズム
・第三章 八幡浜市役所時代の外部世界との関係
蔵田周忠との関係/内田祥哉および建築計画研究者との関係/彰国社の編集者との関係/「建築家ベストテン 日本の十人」について/川添登による評価について/神代雄一郎による評価について/土浦事務所の人々との関係について/八幡浜市役所時代の松村正恒と外部世界との関係
・結論
・補遺
著者:花田佳明
出版社:鹿島出版会
サイズ:A5
ページ数:651
発行年:2011.02
