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SSA 緊急事態下の建築ユートピア

セール価格 3,850円(税込)

一九三〇年代、大恐慌下のアメリカ。フラー率いる建築家集団SSAから発生した建築と社会の変革をめぐる活発な議論を、現代から参照する

第一次・第二次世界大戦間期の建築家たちによるユートピアへの希求とその帰結について、本書では運動の中心地であったヨーロッパにおける事例ではなく、アメリカ合衆国におけるひとつの展開に着目する。すなわち、一九三〇年代初頭のニューヨークにあらわれた「構造研究会(Structural Study Associates, SSA)」を名乗るバックミンスター・フラー率いる建築家集団と、彼らを取り巻く人々とのあいだでの議論の諸相である。大恐慌という資本主義社会の危機のさなかに活動を開始したこの団体は、産業化に立脚点をおいた建築観を背景として、大恐慌という「緊急事態(emergency)」をユートピアの「発生(emergence)」の契機へと転じるような、建築、都市、そして社会全体にわたる変革構想を提示していた。

■目次

序章 見えない団体

第I部 産業化・コミュニティ・美学 近代建築の三つの立脚点

 第1章 摩天楼の都市と建築家の疎外 アメリカ建築界の状況と課題

 1 「時―空間」建築をめざして

 2 「紙上建築」論争

 第2章 産業化とコミュニティ―建築雑誌の変容と近代建築をめぐる二つの立場

 1 産業時代の建築

 2 「テクニカル・ニュース・アンド・リサーチ」

 3 工場生産住宅論争

 第3章 「インターナショナル・スタイル」を定義する―MoMA「近代建築」展への道のり

 1 建築の没落と再生

 2 一九三一年の前哨戦

第II部 エマージェンシーからエマージェンスへ 転換点としての一九三二年

 第4章「インターナショナル・スタイル」への迎撃 SSAの建築思想

 1 SSAの登場と『シェルター』の創刊

 2 「近代建築」展から「SSAシンポジウム」へ

 3 もうひとつの「インターナショナル・スタイル」、あるいはソヴィエト建築の問題

 第5章 大恐慌と「産業共産主義」 SSAの社会変革構想

 1 緊急事態と発生

 2 エンパイア・ステート・アパートメント

 3 マルクス主義者との対決

第III部 シェルターか、革命か? ニューディール期における分岐と相克

 第6章 SSAからFAECTへ 建築家と労働組合運動

 1 労働者としての建築家

 2 ハウジング政策批判

 3 資本主義下のハウジング

 第7章 モビリティのユートピア―「移動住宅」をめぐる構想と論争

 1 トレーラー・フィーバーと「移動住宅」

 2 「モービルタウン」への旅

 3 モビリティVSコミュニティ

第8章 産業化の二つの戦線 建築生産の理論化とユートピアの行方

 1 技術と政治

 2 環境制御と文化戦線

 3 崩壊するユートピア

 終章 反復される問い

著者:印牧岳彦

出版社:鹿島出版会

サイズ:A5

ページ数:382

発行年:2023.03