
アルド・ロッシ 記憶の幾何学
アルド・ロッシの建築に特徴的な円形、正方形、三角形からなる「幾何学」の設計思想と、共有された「テンデンツァ」運動の理念とは。
20世紀後半に活躍したイタリアの建築家、アルド・ロッシ(1931-1997)のプロジェクトを参照しながら、その設計思想を軸に、理論・建築・ドローイングの3つを対象として論じる。今なおポストモダン時代の建築家として括られることの多いアルド・ロッシ。本書では、ロッシを中心に形成された「合理主義建築」を標榜する1973年の「テンデンツァ」運動と、その背景にある「幾何学」の設計思想を、同時代の建築家たち カルロ・アイモニーノ、マンフレッド・タフーリ、ジョルジョ・グラッシ、ジャンウーゴ・ポレゼッロらとの協働を通して読み解く。ここから、イタリア戦後建築と社会思想が辿った道筋について新たな見方を提示する。ロッシの手記やドローイング、著者による実作写真、図面・立体モデルの豊富な資料を盛り込み、被覆材の貧しさ、幾何学形態の理論的なアプローチ、それらをつなぐ「記憶」の在り方に着目し、理論とイメージが抱合される場を見出す。ロッシ/テンデンツァ研究書として、既存の一面的な理解ではないロッシ像を現代によみがえらせる。理論のみならず、創造的活動の端緒ともなる設計者必読の書。
■目次
・はじめに 忘れられた建築家、アルド・ロッシ
・第1部 未完の幾何学
序章 闘争の季節 アルド・ロッシと合理主義の問題
第1章 貧しさの建築類型 類型概念における材料と形式
第2章 生きられた立方体 SDAの立方体の反復と共有
第3章 未完なる絶対性 マンフレッド・タフーリと幾何学の志向
・第2部 かたちの記憶
第4章 類推の構築 設計エスキースの「○△□」の布置と参照
第5章 記憶と少年期 建築ドローイング、事物の反復と忘却の経験
第6章 傾向建築をめざして 建築教育における「テンデンツァ」理念
・インタビュー アルド・ロッシと日本 堀口豊太 聞き手:片桐悠自
・おわりに 記憶の幾何学
著者:片桐悠自
出版社:鹿島出版会
サイズ:四六変
ページ数:440
発行年:2024.04