子どものいない校庭 都市戦略にゆらぐ学校空間
都市空間、環境問題、地域コミュニティ、子どもをめぐる問題の解決のために期待される「校庭芝生化」。それは本当に「子どものため」なのか? 本書は、明治期以降の資料を用いて、「子どものため」の空間が「子ども不在」のままに形づくられてきた歴史を論証する。きわめて身近である空間から現代社会の課題を照らし出す。
■目次
・はしがき
・序章 校庭の風景を問い直す
「当たり前」の校庭に潜む問題
「校庭芝生化」へのアプローチとその限界
校庭史研究の視点とその問題
校庭の歴史社会学的探求へ向けて
本書の課題と構成
・第一章 校庭の設置と身体の教育論 一九〇〇年代前後の社会
近代的学校および校庭の輸入
校庭の設置 「遊び空間」から「教育空間」へ
都市空間の「整備」と校庭
空間の「整備」と子どもの身体
・第二章 「子どものため」という論理の齟齬 戦後から一九七〇年代
量を問うこと 教育と生活環境の論理の共振
質を問うこと 子どもの怪我と「校害」問題
「校庭芝生化」の芽生え
・第三章 近代化の反省と<校庭>の「改善」 一九七〇年代
議論の傾向
議論の沸騰と政策展開
争点としての都市環境・子ども
衰退と帰結 <不都合性>の否定
一九七〇年代の芝生空間へのまなざしと「遊び空間」
・第四章 自在運動する「効果語り」 一九九〇年代以降の展開
「校庭芝生化」の語られ方 拡大と停滞
拡散する論争 経済性という問題の回避
校庭へのまなざしの対立と調停
・第五章 都市空間の「創出」と「子ども」の希薄化 二〇〇〇年代以降
政策のなかの「校庭芝生化」
「校庭芝生化」の捉えがたさ
「子ども」の不在と「効果語り」の危うさ
・終章 子どものいない校庭
「子ども不在」の政治
結論と課題
著者:高久聡司
出版社:勁草書房
サイズ:A5
ページ数:192
発行年:2014.01
