スローシティ 世界の均質化と闘うイタリアの小さな町
日本を覆っていく閉塞感の一つに、私は、生活空間の均質化というものがあるように思う。郊外型の巨大なショッピングモール、世界中同じような映画ばかり上映するシネコン、画一的な住宅街、駅前や国道沿いに並ぶチェーン店。だが、私たちにこの世界の均一化から逃れるすべがあるのだろうか。世界のどこにもない個性的な町など、おとぎ話に過ぎないのか。そんなことを自問しながら、私はイタリアの小さな町を訪ねた。スローシティやイタリアの美しい村連合に共鳴した小さな町、ショッピングモールの締め出しに成功した町、フェラガモが創り上げた大農場やオーガニックの父と呼ばれた人物の住む村。
グローバル社会の中で、人が幸福に暮らす場とは何かということを問い続け、町のアイデンティティをかけて戦う彼らの挑戦に、その答えを探る。
■目次
・まえがきに代えて
アブルッツォ州 フランカヴィッラ・アルマーレ
・なぜ、私たちはトルーデに来なければならなかったのか?
世界の町がどこか似通ってくるという面白くもない事実について
・1章 人が生きていく上で必要なもの、それは人間サイズの町だ
トスカーナ州 グレーヴェ・イン・キアンティ
・2章 スピード社会の象徴、車対策からスローダウンした断崖の町
ウンブリア州 オルヴィエート
・3章 名産の生ハムと同じくらい貴重な町の財産とは?
フリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州 サン・ダニエーレ
・4章 空き家をなくして山村を過疎から救え!――アルベルゴ・ディフーゾの試み
リグーリア州 アプリカーレ
・5章 ありえない都市計画法で大型ショッピングセンターを撃退した町
エミリア・ロマーニャ州 カステルノーヴォ・ネ・モンティ
・6章 絶景の避暑地に生気をもたらすものづくりの心
カンパーニャ州 ポジターノ
・7章 モーダの王者がファミリービジネスの存続を託す大農園
トスカーナ州 アレッツォ
・8章 町は歩いて楽しめてなんぼである
プーリア州 チステルニーノ
・9章 農村の哲学者ジーノ・ジロロモーニの遺言
マルケ州 イゾラ・デル・ピアーノ
・あとがき 場所のセンスを取り戻すための処方箋
著者:島村菜津
出版社:光文社
サイズ:新書
ページ数:286
発行年:2013.03
