
「神国」の残影 海外神社跡地写真記録
大日本帝国時代に創建された「海外神社」のいま。
公園で遊具となる鳥居、ジャングルに佇む鳥居、あるいは学校や教会にかわっても、その参道、石灯籠はかつて神社であったことを物語る……。これは日本の風景ではない。かつて大日本帝国がアジア地域を中心につくった「海外神社」である。その数1700余社が残り、いまだ全貌は明らかではない。
写真家・稲宮康人は台湾、中国、韓国、北朝鮮、ロシア、フィリピン、サイパン島、テニアン島等、14の国と地域、200社にのぼる海外神社跡地を10年をかけて撮影してきた。大判フィルムカメラによる80社82点の写真からは、現在に残る「神国」の記憶がたちのぼる。またあえて、明治以降に作られた国内神社も収録し、「あった」と「ある」との比較に写真家としてのテーマを求めた。
本書は鮮やかな海外神社跡地写真とともに、長年にわたり海外神社跡地の調査を続ける中島三千男の最新の論考、あるいは在りし日の神社写真、詳細な神社解説により、戦前の植民地支配の実態、戦後のそれぞれの現代史、ひいてはカルチュラル・スタディーズやポストコロニアリズム研究への新たな手がかりとなるだろう。また大日方欣一による写真論を収録し、現代写真のひとつの在り方を問う。
神奈川大学非文字資料研究センター「海外神社跡地のその後」班メンバーによる集大成、知られざる戦後史のフィールドワークの成果。
■目次
・写真篇
台中神社/台湾神宮/台湾護国神社/台南神社/嘉義神社/新城社
員林神社/佳冬神社/新竹神社/鹿野村社/沖縄神社/樺太神社/樺太護国神社
北海道神宮/朝鮮神宮/京城神社/平壌神社/鎮南浦神社/龍頭山神社
慶州神社/小鹿島神社分社/小鹿島神社/江原神社/公州神社/東山神社
京城護国神社/大邱神社/朝鮮神宮/扶餘神宮/橿原神宮/南洋神社/和泉神社
都洛神社/彩帆神社/泉神社/靖国神社/日之出神社/文官屯神社/霧ケ岡社
南興神社/松汀神社/済南神社/建国神廟/鞍山神社/建国忠霊廟/加能神社
文官屯神社/永安神社/哈爾濱神社/吉林神社/大連神社/営口神社/牡丹江神社
佳木斯神社/満洲諏訪神社/近江神宮/北京神社/上海神社・上海護国神社
太原神社/汕頭神社/南京神社・南京護国神社/青島神社/杭州神社/厦門神社
九江神社・九江護国神社/蒙疆神社/芝罘神社/赤間神宮/昭南神社
紘原神社・護国神社/鎮南神社/比島神社/ミンタル稲荷/バヤバス大和神社
長政神社/香港神社/名和神社/阿部野神社
・テキスト篇
「海外神社及びその跡地について」中島三千男
第I部 海外神社の歴史的概観
第1章 全体的概観
第2章 地域別概観(1) 東北アジア、ミクロネシア
第3章 地域別概観(2) 東南アジア
第II部 海外神社跡地の現在
第1章 海外神社跡地の景観変容の四類型
第2章 海外神社跡地の景観変容の要因
おわりに
「くに という主題系 写真家稲宮康人の探究」 大日方欣一
「各神社解説」稲宮康人
著者が調査した海外神社跡地一覧
あとがき
著者:稲宮康人、中島三千男
出版社:国書刊行会
サイズ:A4横
ページ数:185
発行年:2019.11