山林都市 黒谷了太郎の思想とその展開
詠み人知らずとなったユートピア。
職住一体で経済的に自立し、エネルギーを地産地消する都市。家屋の3倍の面積を標準とする宅地が並び、電気自動車が走るその都市は、大きな家庭でなければならない、、、、。大正10年に「山林都市」を著し、た黒谷了太郎は、その実現をみることなく一生を閉じた。
一方で、第二次世界大戦後に西山夘三・丹下健三・菊竹清訓・山下和正らが手掛けた計画の中には、「山林都市」「森林都市」「林間都市」「山岳都市」という言葉を見出すことができる。敗戦から高度経済成長を経てバブル経済が破綻する道程において、黒谷の「山林都市」は、現れては消えていく「詠み人知らずのユートピア」となっていた。
「山林都市」の実現は、われわれ日本人の彼岸なのかもしれない。
■目次
・第一章 「山林都市」前史
「山容」の美学、「林相」の美学
・第二章 山林都市/一名林間都市
都市計画家・黒谷了太郎、「山林都市」の特徴
「山林都市」以外の著作について
黒谷了太郎による「山林都市」の位置づけ
・第三章 「山林都市」の想像力
都市計画愛知地方委員会による整地事業
小田原急行鉄道株式会社による「林間都市計画」
B・タウトによる「生駒山嶺小都市計画」
小林一三による「森林公園式都会」
・第四章 「山林都市」の構想力
西山夘三、菊竹清訓、南海電鉄による住宅地としての「山林都市」
丹下健三、菊竹清訓、山下和正らによる別荘地としての「山林都市」
・第五章 「山林都市」のデザイン
「斜面」のデザイン、「緑地」のデザイン
「山林都市」の遺伝子
著者:堀田典裕
出版社:彰国社
サイズ:B5
ページ数:173
発行年:2012.12
