エッフェル塔試論
ギュスターヴ・エッフェルによるエッフェル塔をめぐる歴史的な分析を試みた書。
古典的な「表象」の崩壊に代わって「イメージ」の出現という出来事が成立する時点において、恐らくエッフェル塔とは、西欧の表象空間に起きたこの地滑りをそれ自体鮮烈に表象している記号であり、その竣工の日付をこの認識論的断層の上に重ね合わせることが可能であるように思える。エッフェル塔の伝記を辿っていくとき、こうした「近代」的な「イメージ」の生成過程と、それを可能ならしめた文化的・社会的・政治的力学の諸条件が、或る模範的な姿で浮かび上がってくる。近代と表象とをめぐるさまざまな問題を体現した特権的な塔を透徹した論理と輝かしくも華麗なエクリチュールで徹底的に読み解く記念碑的力作。
著者:松浦寿輝
出版社:筑摩書房
サイズ:文庫
ページ数:540
発行年:2000.02
