眼の隠喩 視線の現象学
青土社より刊行され、品切れとなった「眼の隠喩 視線の現象学」が文庫版で復刻。
<見る>ことは、その時代の価値体系に常に拘束されている。写真・カタログ・家具から超高層建築にいたるまで、事物と空間に隈なく浸透する<視線>の解明を通じて、想像力や思考と<視線>との不可分のダイナミズムを照射する。モノをとおしての大変興味深い精神史であり、最新の理論的成果を駆使した、記号論考察の一つ。今日の文化を根源的に捉え直す画期的視座。
■目次
はじめに 視線とテキスト
I
・1 イメージの交通 象徴と地理的空間
象徴表現と空間性
文化/非文化という分節
新世界/旧世界への変化
空間のインディアン
ギリシャの女神への回帰
II
・2 人形の家 理性と遊戯性/経験の空間性
理性と遊戯性
縮小化のまなざし
「家」の内部に生じるまなざし
イニシエーションの変質
人形の家と現実の家
絵画と人形の家
経験の空間性
劇場と人形の家
視線が劇場を浸食する
空間の経験と知の枠組み
視覚のたわむれ
体系を裏切るもの
・3 趣味のユートピア カタログの両義性
ものの体系に縮められた世界
カタログの発生した条件
図法の記号論
商人としての実践と認識「最新流行趣味」
物の統治的認識
時代を動かす思考
III
・4 視線の政治学 眼の隠喩/視線の破砕
眼の隠喩
文化としての視線
支配する「眼」
新しい眼の経験
密室とイリュージョン
知覚することとアナロジー
視線の破砕
コードのないメッセージ
人間の「視線」
「風景写真」の場合
IV
・5 ブルジョワジーの肖像 ある時代の神話
肖像写真だけが商売になった
「個人」と「仮面」
肖像のタイポロジー
記号と反・記号
神話学と社会学
神話的イメージ
・6 測定する視線 19世紀的「知」の断面
社会的概念としての「記録性」
行政家と記録者
「歴史」の誕生
科学に浸透されるまなざし
司法写真の誕生
V
・7 王の寝台 権力の舞台
物にあらわれるまなざし
空間のコード/慣習のコード
政治の劇場
王の身体
・8 椅子の身体論 儀礼と快楽
椅子と身振り
身体技法
姿勢の記号論
快楽と儀礼の関係
身体のまなざし
VI
・9 メトロポリスの神話学 虚構としての視線
隠喩的地理学の変貌
スカイスクレーパーはどのように見えたのか
サーチライトの祝祭
ミメーシスとしての抽象
「塔」の原型
「新しい世界のヴィジョン」
近代芸術の二重性
商業の聖堂
再び司法が見えてきたとき
・註
・あとがき
・文庫版あとがき
・解説 内田隆三
著者:多木浩二
出版社:筑摩書房
サイズ:文庫
ページ数:399
発行年:2008.12
