
聞き書き 伝統建築の家 造る 住む 直す 職人の技
土搗きをし、礎石を置き、その上に柱を立て、木舞をかき壁土を塗る茅葺きの日本の伝統的な木の家。法隆寺棟梁の西岡常一氏が「300年は持つ」と語ったその伝統工法の家がどんどん失われている。建築基準法からその工法が除外されているため、新たに伝統工法の木の家を造ることはできないからだ。そうした中、伝統工法にこだわり、300年たって傾いた建物を直す大工、顔が映るくらい漆喰壁を磨く左官、石の重心を知り積み上げる石工、古民家を解体して再生する職人など、奇跡とも言える技を持つ人びとからの貴重な聞き書き。
■目次
第1章 伝統工法で家を造る
伝統工法にこだわる
昔の家を移築して技を学ぶ
石の重心を知り積み上げる
土壁の小舞は百年たっても大丈夫
風雨に強い白壁で仕上げる
棟のゆがみを見つけるのが大事
人間の感覚だけでできていくのが茅葺き屋根
家を曳くだけではない曳き屋の仕事
古民家を解体して再生する
自分の思うままに伝統建築を建てたい
第2章 伝統工法の素材をつくる
山に木を残す持続型森林経営
林業で馬の価値を高める
山から馬で材木を曳き出す
土佐漆喰は石灰岩を石炭と塩で焼く
国産漆を採取する
漆を植え、採り、塗る
快適な畳は藺草の栽培から
湧き水と雪がつくる上質な障子紙
第3章 伝統工法の家に住む
茅屋根を自分で補修
榧(ルビ:かや)の柱を生蝋(ルビ:きろう)で毎年磨く
世界遺産の五箇山に住む
原発事故を機に長屋門で暮らす
雪国で茅葺き屋根の家を守る
原発事故に遭遇した先祖代々の家
第4章 伝統工法の家を手入れする
表具には紙も糊も十年かける
襖は何回も紙を貼って仕上げる
なめらかに動く建具で快適に
黒ずんだ材を洗って元の美しさに戻す
漆は器だけではなく建物にも塗る
古い家にふさわしい畳をつくる
白蟻に喰われた材を新しくする
水の流れを知り雨漏りを防ぐ
昔の家でも便利に電化
著者:原田紀子
出版社:農文協
サイズ:四六
ページ数:274
発行年:2019.04