経験のスナップショット
著者が1980年から2008年のほぼ30年のあいだに「美術手帖」をはじめ雑誌、展覧会カタログ、企業広報誌などに書いた文章を集大成した内容。彼は、現代美術の中でも一貫して、抽象彫刻の新領域に挑戦しつづけている、現役の作家でもある。
■目次
I
経験としての場/経験のスナップショット/場の断章/軽やかさの強度/<静かなる抽象>のための序/現われの強度を求めて/断章/新しい空間を求めて-仕事の周辺/一枚の紙面から
II
メタルド・ロッソ展/デイヴィッド・スミスの彫刻について/原口典之-抑制された強度のある彫刻/水本修二-状況を越えて屹立する彫刻/伊藤誠-空間の豊かさを内包した自立する彫刻/多和圭三小論-無言の力/ある建築の存在証明/欲望の通路/欲望のドゥローイング/白井晟一の《原爆堂計画》/<速度>としての都市あるいは建築について
III
近さゆえの崩壊《カミーユ・クローデル》/ロブ=グリエ《囚われの美女》/光の濃度と時間の流れ《夏に抱かれて》/《タルコフスキー・ファイルin「サクリファイス」》/《ロベルトは今夜》/背景のない世界《バグダッド・カフェ》と《囚われの美女》/《sex、lies、and videotape》/《ニュー・シネマ・パラダイス》/記述する距離-ウォーカー・エヴァンズ写真展/「風を・・・」-山内雄一郎写真集「風を聞く」/事実を直視する眼-深津美里写真集「Eastbourne」/共振する写真-手塚智子写真集「ORISSA」India/沈黙のなかの映像-木村英生写真集「SILENCE」/混沌の世界に漂う<もう一つの肉体>-笠井叡独舞
IV
<スケールとディスタンス>についての対話-つくることの周辺から/「直角」についての対話/感性の通路/質疑応答-市川和英、大塚新太郎、牛膓達夫、杣木浩一、前田一澄/二つの外皮と放射する絵画-アバカノヴィッチ、寺田真由美、芝章文/空間の律動-沼田直英の作品について/物質的美学へのパースペクティヴ-秋山潔の版画について/上田高弘著「モダニストの物言い」を読む
V
荒川修作の<罠>/戦略的な「ファルマコン'90」/見ることの具体性/欲望の動機/関係としての存在/ガラスのエロティシズム-木下順の作品について/現代美術再考と郭仁植のガラス作品/ネーミングの陥穽/求められる身体の活動性-KARADAがARTになるとき/無限の領域を求めて/素材を超えて/作品を見るのではなく、作品の方からやってくる-「ファーレ立川」を見て/モダニズム、あるいはミニマリズムについて/意識・身体・他者・ものの開示-1970年-物質と知覚-もの派と根源を問う作家たち/歩行という経験の二面性-リチャード・ロング展/「身体の窓」というべき眼と手の行動-「身体と表現」展から
VI
空間へのディアロゴス/色彩の旋律-櫻井美智子/場所の創出-渡辺明/斜交の連関-清水誠/<断章>-屹立する存在-手塚智子/抽象の輝き-後藤寿之/触れるという経験-棒公志朗/時間、あるいは痕跡としての線-井出創太郎/感覚統合の表面-古川流雄
空間のビカミング
開放系の絵画-山本まり子/表層のエロティシズム-杣木浩一/波動の絵画-丸田恭子/触覚的構造の空間-藤堂良浩/彫刻-垂直の<存在>-林武史/瞬時的絵画の生成-館勝生/停留の様態-稲吉稔/絵画の余白-坂本優子
初出一覧
あとがき
著者紹介
著者:髙木修
出版社:美術出版社
サイズ:四六
ページ数:383
発行年:2011.04
