集合住宅と日本人 新たな「共同性」を求めて
日本的な共同体意識からの脱皮なくして、新たな都市住宅は生まれない。集合住宅づくりの現場に立つ著者が、その最前線から問題提起。「私権」と「公権」の間に立つ共同体づくりのヴィジョンを提示。
■目次
・序章 日本人と「共同性」
三島由紀夫の「留魂」/彷徨える家族/会社主義の終焉/「日本人論」のアイデンティティ/新たな「共同性」と集合住宅
・第1章 個別化する都市住宅
集合住宅と共同住宅/ムラからマチへ/江戸の長屋/木造アパートメント/分譲マンションの興隆
・第2章 唱和される「コミュニティ」
曖昧なる多義性/コミュニティの輸入/隣組の呪縛/日本教の「コミュニティ」/コミュニティ原理主義/物理的決定論 工学研究における「コミュニティ」/「愁毒」のふるさと
・第3章 「コミュニティ」から「ガバナンス」へ
「コミュニティ」のある集合住宅(コーポラティブ方式)/定義と利点/自由設計の理想と現実/親和性の結末/竣工すれば卒業する(building cooperative)/「ガバナンス」による共同性/信頼の醸成/分権型ガバナンス
・第4章 「政体不在」の「まちづくり」
「まちづくり」の系譜/ハワードの遺産/田園都市のアメリカ版(プライベートピア)/郊外居住区の生成/建築協定の限界/ニュータウンのオールド化/レッチワースは「聖地」といえるのか
・第5章 要塞都市 ゲーテッド・コミュニティ
要塞都市の出現/ステイタスと享楽型ライフスタイル/セキュリティの過剰化/究極の要塞(超高層マンション)/共用施設と利便施設/富裕層の楽園?
・第6章 都市を集合住宅とせよ
都市とは何か/保安圏型コミュニティ/六麓荘と香港/土地公有論の陥穽/町内会と近隣政府/住民運動と住民エゴ/「騒音オバサン」と「ゴミ屋敷」/景観に揺れる「まち」/京都の町家/「まちづくり」とは集合住宅づくりである
・第7章 私的政府における参加と熟議
自治なる虚影/「アゴラ」の理想/タウン・ミーティング(全員集会)/マネージャー制と信託/住民投票における責任/熟議と包摂(政治的責任)/制限政治の是認/「私的政府」対「公的政府」
・第8章 都市人の理想 「警戒」と「自立」
「お上」とセキュリティ/安全は「タダ」?/「コミュニティ」による防犯?/「過防備」を問う声(物理的障壁が「悪」なのか)/安心社会の本質/リアリズムと「共同性」
・補論 究極の都市人 京都人
「要塞都市」の京都/町人による支配/「警戒心」都市人としての作法
・終章 デモクラシーと公共性
デモクラシー対自由/法の支配/「コミュニティ」を超えて(ウィーク・タイズ)/集合住宅、地方自治体、国家/他者感覚、そして「公共性」
著者:竹井隆人
出版社:平凡社
サイズ:四六
ページ数:301
発行年:2007.10
