
水都としての東京とヴェネツィア
水の都として知られる江戸-東京とヴェネツィアの人びとは、古くより水とともに生き、文化・コミュニティを育み、経済活動を営んできた。建築学、歴史学、社会学、文学、ガバナンス、アートといった学問領域を横断し、二つの巨大な〈水都〉の過去・現在・未来を一望する論文集。生活が一変したコロナ禍の世界において、豊かでサスティナブルな都市の姿をふたたび描き出すための手がかりがここにある。
■目次
序 二つの水都を比較する意味(陣内秀信)
イントロダクション
江戸における水辺の文化 (田中優子)
ヴェネツィアと海 コスモポリタンな商業都市 (ドナテッラ・カラビ)
第一部 場所の記憶、水の記憶
地誌と絵本挿絵のなかの江戸 (小林ふみ子)
都市の娯楽と記憶 『むだ砂子』考 (マスキオ・パオラ)
水辺の記憶 神田川周辺の失われた水流空間の痕跡 (ローザ・カーロリ)
視覚的記憶と水面 ヴェネツィアを見つめた写真家のまなざし (アンジェロ・マッジ)
第二部 地図学と地理学における水都
現代に継承された江戸東京の庭園 水系と地形の多様性が生み出すユニークさ (畠山望美)
絵地図における首都東京の風景表象 江戸から明治へ (米家志乃布)
第三部 建築遺産と未来
効果をあげないヴェネツィア保全のツール その理由は? (ジョルジョ・ジャニギアン)
「地域の生態系」の維持や継承 東京の「銭湯」の例 (栗生はるか)
ヴェネツィアと東京の比較研究の意義 歴史の継承と保存問題 (マテオ・ダリオ・パオルッチ)
第四部 水都をとりまく環境
ヴェネツィア 水のテリトーリオ (フランコ・マンクーゾ)
水に映しみる墨東の変貌 (ポール・ウェイリー)
江戸東京の聖地から浮かび上がる都市と環境の領域 (高村雅彦)
ラグーナのブドウ・オリーブ栽培 伝統とリキッド・モダニティ (フェデリカ・レティツィア・ カヴァッロ/ダヴィデ・マストロヴィト)
第五部 グローバル都市の住民 経済・文化・ガバナンス
水都東京の再生プロセスと今後への展望 (陣内秀信)
「大都市圏ヴェネツィア」に関する議論における水とウォーターフロント、
もしくは欠けている論点 (ステファノ・ソリアーニ/アレッサンドロ・カルザヴァーラ)
団地とタワーマンション:周縁と中心、内陸とウォーターフロント
東京圏の集住の起源と現況を概観する (渡辺真理/木下庸子)
結び 水都の再発見、回復、レジリエンス(ローザ・カーロリ)
著者:ローザ・カーロリ、小林ふみ子、陣内秀信、高村雅彦、法政大学江戸東京研究センター
出版社:法政大学出版局
サイズ:A5
ページ数:462
発行年:2022.01