ニューメディアの言語 デジタル時代のアート、デザイン、映画
1990年代以降、デジタル・テクノロジーの急速な普及によって、文化は未曾有の変容を遂げた。これははたして印刷術の発明に匹敵するような、文化の根本的な転換なのか?それとも、これまでのメディア史の延長線上にある現象にすぎないのか?
マノヴィッチの答えは、そのどちらでもある、というものだ。一方で、19世紀前半以来のコンピュータ計算と各種メディア・テクノロジーの二つの歴史の合流点に登場する「ニューメディア」は、原理的にはコンピュータで計算・操作可能なデジタルデータとしてのみ存在し、固有のかたちを持たない。その意味で、ニューメディアは、従来のメディアとは根本的に性質を異にし、「メディア」という概念そのものの再考を迫っている。
しかし他方で、マノヴィッチはウェブサイトやソフトウェア・アプリケーションからコンピュータゲームやメディアアートのデザインに至るまで、コンピュータ化された文化の広範囲にわたる現象を縦横無尽に取り上げながら、ニューメディアがいま実際に取っている姿が、従来のメディア、とりわけ映画の慣習にどれほど多くを負っているかを検証していく。デジタル黎明期の実際の現れとしては、ニューメディアはオールドメディアと連続しているのである。マノヴィッチの広範で刺激的な議論は、メディア研究者のみならず、アートとデザインの実作者にとっても実りあるヒントをもたらすだろう。
著者:レフ・マノヴィッチ、堀潤之
出版社:みすず書房
サイズ:A5
ページ数:485
発行年:2013.09
