動いている庭

「植物はつくりこまれた庭から逃れて、ただ花を咲かせるのに適した地面だけを待ち望んでいる。あとは風が、動物が、機械が、種子をできる限り遠くへと運んでいく。自然はこうして、とりなしてくれるすべての媒介者を利用する。そしてこの組み合わせのゲームのなかで、人間という媒介者は最良の切り札なのだ。それなのに人間はそのことを知らずにいる。新しい庭は人間なしでつくられるのか？」（本文より）

著者は自邸である「谷の庭」で実験と観察を重ねながら、種の多様性、さまざまなエネルギーの混在、美が展開する庭づくりの技術と管理方法を見いだしてゆく。著者にとって、庭は人が驚きと出会う空間、庭の仕事は夢の光景を創り出す営みだ。だからここに収められた文章と写真は、夢を見るために試行錯誤をくりかえす庭師の、思索と実践の記録でもあるだろう。本書は、庭づくりの手引きを越えた、自然と人間の関係をめぐる智恵の宝庫である。ジル・クレマンの思想は、生命のゆらぎのなかに生きるわたしたちに多くの示唆をもたらすだろう。

■目次

　序

　秩序、エントロピーとノスタルジー、奪還

　荒れ地、極相、動いている庭、実験、ずれ

　放浪、アンドレ・シトロエン公園の七つの庭

　アンドレ・シトロエン公園の七つの庭の植物

　動いている庭にまいた種子のリスト

　連なりの庭の植物リスト

　・新たな動いている庭

　　ローザンヌのフィセル、レイヨルの園

　　リヨン市、シャンブレ

　　ブルジュのレゼネ採石場

　・動いている庭と共通点をもつ庭

　　ロシュ=ジャギュ、トレデュデ

　　モンジャック、その他

　野原

　野原にまいた種子のリストおよび経年変化

　サン=テルブランのジュル・リフェル農業高等学校

　結論－動いている庭についての

　・動いている庭から惑星という庭へ

　　評価、整備、教育、リサーチ

続きを待ちながら

補遺

　アラン・ロジェ「動いている庭から惑星という庭へ」

　惑星という庭・自然・農業