ホーム 建築家の読書塾

建築家の読書塾

セール価格 4,400円(税込)

「モダニズムの建築・都市理論は、いまや現実と乖離し説得力を失っている状況にある。〔…〕近代建築への〈異議申し立て〉としてあらわれたポストモダニズムは、たしかにモダニズム理論の弱点を衝いた面もあったが、その建築的な表現は一時的な流行として消費されてしまった。逆にポストモダニズムの表現上の空転は、現代がいまだに〈近代化=モダニゼーション〉の影響下にあることの逆証明のように思われる」

「ぼくたちは現在においても〈近代化=モダニゼーション〉の潮流から逃れることはできない。問題はモダニズムの建築・都市理論が、あまりにも純粋で抽象的すぎた点にあるのではないか」

難波和彦が東大退官後の2010年、研究室OBを中心に始まった読書会の記録。「日常性」「複雑性」「具体性」「歴史性」「無名性」「無意識」をキーワードに掲げつつ、全編担当者による問題提起的レビューと編者解説というゼミ形式で「ひとりで読むにはややヘヴィで、メンバー相互で突っ込んだ議論をしてみたい」12の書を読みとく。建築家からユーザーの立場へ、アートからデザインへ。「モダニズム運動の陰で捨象された〈近代〉をとらえる精細でオルタナティヴな視点の探索」の試み。巻末に「難波研究室必読書30冊」を付す。

■目次

はじめに ガイドマップにかえて 難波和彦

I 日常性の美学

  ミシェル・ド・セルトー『日常的実践のポイエティーク』を読む

  「建築の物語」西島光輔+栃内秋彦

  「技術の起源へむかって」難波和彦

  レム・コールハース『S, M, L, XL+』を読む

  「〈+20年〉の推測から確信へ」小林恵吾

  「プログラム‐調査‐理論化‐デザインの連鎖」難波和彦

  エドマンド・バーク『崇高と美の観念の起原』を読む

  「〈崇高〉が現代にもたらすもの」遠藤政樹+佐々木崇

  「美学の深度」難波和彦

II 無意識の構造

多木浩二『生きられた家』を読む

  「正しい誤読法」服部一晃

  「機能主義2.0」難波和彦

バーナード・ルドフスキー『驚異の工匠たち』を読む

  「ヴァナキュラーから建築を考える」岩元真明+川島範久

  「自然と作為のデザイン論」難波和彦

J・J・ギブソン『生態学的視覚論』を読む

  「知覚の多様性と対立性」岡崎啓祐+光嶋裕介

  「生態学的建築論をめざして」難波和彦

III 自生的秩序と計画

ジェイン・ジェイコブズ『アメリカ大都市の死と生』を読む

  「大都市のゴッドマザー」岩元真明

  「自生的デザインの可能性」難波和彦

マンフレッド・タフーリ『球と迷宮』を読む

  「仕掛けられた難解な計画=企画をどう読みとくか」龍光寺眞人

  「抑圧されたモダニズムの回帰」難波和彦

I・プリゴジン、I・スタンジェール『混沌からの秩序』を読む

  「ノイジーな計画学」中川純+田中渉

  「決定論的カオスの教え」難波和彦

IV 歴史の底流

磯崎新『建築における「日本的なもの」』を読む

  「建築における〈国家的なもの〉のゆくえ」千種成顕+梅岡恒治

  「〈日本的なもの〉のデ・コンストラクション」難波和彦

ヴァルター・ベンヤミン『パサージュ論』を読む

  「〈鉄骨〉と〈室内〉の弁証法」岩元真明

  「歴史の効用」難波和彦

アンドレ・ルロワ=グーラン『身ぶりと言葉』を読む

  「欠乏から生まれる新しいリズム」杉村浩一郎+佐藤大介

  「建築の原型へ」難波和彦

・付録 難波研究室必読書30冊

著者:難波和彦

出版社:みすず書房

サイズ:四六

ページ数:319

発行年:2016.01