自然倫理学 エコロジーの思想
自然倫理学は自然の価値の探究である。
自然と人間の幸福(善き生)はいかに関わるのか。自然に対するわれわれの道徳的かつ実践的関心とは何か。
そうした問いに答えるためにクレプスはまず、「自然」「倫理学」「道具的価値」「内在的価値」「人間中心主義」「自然中心主義」といった基本的な概念を明確に定義する。
つづいて、自然の価値に関する人間中心主義と自然中心主義のさまざまなヴァージョンを批判的に取り上げながら、自然に情感的な価値を認める「啓蒙された人間中心主義」や、他者の幸福に対する尊重を自然にまで拡張する「拡張主義的自然中心主義」を、わかりやすく説く。
「自然にはやはり道徳的な内在的固有価値も存在する。(…)世界の中に絶対的価値を持つものが存在しないのと同様に、自然の中には絶対的価値を持つものは何も存在しない」。
「自然を保護する主要な根拠は人間中心主義的なものです。人間は生き残るためだけに自然を必要としているのではなく、善く生きるためにも自然に依存しているのです」。
従来の応用倫理学に対して原理倫理学とも言うべき新たな領域を切り拓く、ドイツでシュテークミュラー賞を受賞した画期作。
著者:アンゲーリカ・クレプス、加藤泰史、高畑祐人
出版社:みすず書房
サイズ:四六
ページ数:312
発行年:2011.05
