
日本のダム美 近代化を支えた石積み堰堤
「石積み堰堤(えんてい)」とは、ダム本体の外部を石積みで囲い、内部に大きな石を用いたあとにモルタルを流し込むという建造方法に由来するもの。外面は天然石やブロックをはってつくる石張りで、手づくりによる凝った装飾が美しい景観を呈している。
本書では、日本の明治・大正・昭和初期までの約50年間で50基ほどつくられた石積み堰堤の建設の歴史や技術の変遷、ダムエンジニアたちの高い心意気などを見つめなおすことで、ダムの魅力だけでなく、近代化を世界で最も早い時期になしとげた日本の新たな魅力をさぐっていく。
■目次
1. 日本の近代化のなかで
国内の石積み堰堤
明治期の日本と欧米の技術格差
水道供給のための石積み堰堤の建設
軍港補給水のための石積み堰堤の建設
農業用水供給のための石積み堰堤の建設
水力発電のための石積み堰堤の建設
工業用水供給のための石積み堰堤の建設
国内におけるコンクリートダムの登場
石積み堰堤の設計者たち
2. 世界の石積み堰堤の歴史
古代〜近世の石積み堰堤
設計の理論化による大型化
石積み堰堤の黄金期(1870〜1920年代)
石積み堰堤の転換期(19301950年代)
材料と工法の発展
3. 石積み堰堤の分類
時代の変化で目的も変わる
ダムの型式と構造の違い
堤体の断面形状の進化
堤体材料の違いによる分類
石積み堰堤の洪水吐きの種類
4. 「用・強・美」の「強」
外部材としての石材の施工法
石積みによる堤体外側の形成方法
粗石コンクリート工法による構築
石積み堰堤の施工方法
粗石コンクリート工法によるコンクリート及びモルタルの品質
横継目、排水孔及び通廊
材料費からの石積み堰堤工事費の考察
堤体工事費の比較とそこから見えるもの
5. 石積み堰堤を末長く使う
維持管理の重要性
石積み堰堤の耐久性
貯水位を低くする
堆砂への対策
補修・補強して景観を残す
現代によみがえる石積み風のダム
6 石積み堰堤の美
下流面の美
石装飾の美
上流面の美
重要な取水塔のデザイン
天端道路と高欄
石材と目地の織り成す表情
越流の妙
碑文は語る
7. 石積み堰堤を愛でる
42例を紹介。
・ダム雑学
・コラム
日本の水力発電の曙、長崎大水害緊急ダム事業
著者:川崎秀明
出版社:ミネルヴァ書房
サイズ:A5
ページ数:314
発行年:2018.10