
みんなの建築コンペ論 新国立競技場問題をこえて
建築コンペは、公共的価値を高める装置として、広く行政に取り入れられ、建築的にも社会的にも価値のある建築物を、各所にもたらしてきた。
しかしながら、新国立競技場問題は、それが現代社会において本当に価値をもたらすものなのか、という問いを突きつけた。むしろ、そこであらわになったのは、建築界と社会との絶望的なまでのコミュニケーション不全であった。本書は、新国立競技場問題を見つめてきた、建築家と建築史家が、その失敗を検証し、建築コンペの歴史・現状を詳らかにしながら、現代社会にマッチする建築コンペのモデルを提案する。
■目次
序 誰がためにコンペはあるのか
第1章 傷だらけのコンペ 新国立競技場コンペをめぐって
1 「新国立競技場基本構想国際デザイン競技」
2 専門家の異議から、白紙撤回へ
3 やり直しコンペの開催
4 社会はコンペで何を得たのか
第2章 コンペの歴史が語ること
1 便益への欲望 便利で利益のあるものをつくりたい
2 美麗への欲望 美しいものをつくりたい
3 継承への欲望 新人に機会を与えたい
4 似姿への欲望 「われわれ」にカタチを与えたい
5 調和への欲望 すでにある環境に合うものをつくりたい
6 公平への欲望 つくるものを公平に選びたい
7 破壊への欲望 いままでにないものをつくりたい
8 みんなの欲望をカタチにする装置としてのコンペ
第3章 日本のコンペの仕組みはどうなっているのか 設計発注方式の変遷
1 日本のコンペのいま
2 設計発注方式の種類
3 入札と随意契約
4 特命から「プロポーザル」へ
5 品確法とコンペの消滅
6 建築の専門家はどのように発言してきたのか
7 コンペを継承していくために
第4章 「いい建築」を合意するプロセスへ ポスト新国立競技場の建築コンペ像
1 「善きもの」としてのコンペ
2 現代社会におけるコンペの弱点
3 コンペという概念を更新する
4 これからのコンペのための三つの提言
5 コンペの再構築に向かって
終章 コンペがつくる「いい建築」
著者:山本想太郎、倉方俊輔
出版社:NTT出版
サイズ:四六
ページ数:237
発行年:2020.07