なぜ、いま木の建築なのか
我々は、古来より建築の資材として木を使っている。木材は心地よい空間をつくる反面、強度や品質のバラツキ等が使いにくさにもなっている。木には、特性を活かしたつきあい方があるはずだ。基本データから本来の性質を探るとともに、木材の規格・品質表示や新技術を紹介。また、CO2削減に貢献する木の建築の普及を提案する。
■目次
・はじめに―なぜ、いま木の建築なのか
・1章 日本の木を知っていますか
スギは日本の樹―すぎ・杉・スギ/スギは体積の約75%が空気―柔らかさと暖かさ/木は人の生活を包む―スギは食物に関わってきた/エコロジーはエコノミー―ほどほどに/木の香りはいずこへ―五感の衰退、さて次は/生物体を認識―生物は順応する/地域と木材1 刺激と感受性―地域活性の原点
・2章 木の「強い」「弱い」とは
木の個性とうまくつきあう―規格と品質表示/木は使いよう、スギの利用技術―まず、常識の見方を変える/「芯持ち材は強い」は本当か―芯部分と芯持ち材とは異なる/木材の構造材料としての法的な扱いは/住宅におけるエンジニアリングウッドの進展/木材の強度特性は時間に依存する/地域と木材2 地元資源を活かす技術や文化
・3章 木材・木造とのつきあいは水とのつきあい
知っておきたい木材の水に関する重要な用語/木造・木材の原点としての木材乾燥/なぜ木材乾燥なのか―枠組壁工法や丸太組工法からの教訓/木材のメカノソープティブ変形とは―水に関わるトラブル/住宅における乾燥材の誤解―言葉と数値の一人歩きへの危惧/施工合理化と管理/地域と木材3 規制緩和と自己規制
・4章 ストックとしての木造建築
「火事は人が消す」の教訓/「都市の森林」としての木造住宅/風格ある木造住宅―スクラップ・アンド・ビルトからの脱却/中古住宅―循環するための責任/耐用年数と資源ストック―持続可能への時間と空間(面積)の変換/古くて良いものボロいもの/百年住宅、二百年住宅/「石の文化」と「木の文化」
地域と木材4 地域資源と更新
・5章 育てて使う連携
循環型社会に求められる資源生産の視点/「消費が消費を生む」と「消費が生産を生む」/日本の木材資源は増えているが、持続性は? /木材資源を利用するための連携―キーパーソンは製材業/プレカットが木材の流れをかえた /森林と木材そして都市の連携/資源の流れの中での連携―処理から再生へ/資源循環を支えるデポジット制/地域と木材5 権利と義務、エイジ制の導入
・6章 地球温暖化防止対策における森林・木材・木造
炭素循環における資源生産/森林吸収源対策としての森林整備/木材でできることは木材で―木材は省エネルギー資材/木材・木製品は炭素貯蔵庫/第二約束期間における伐採木材の評価/バイオエネルギーは万能か/自立・自律とLCA/もっと森林を、もっと樹木を、もっと木材を、適切な使い方を
・おわりにかえて―スギの一本一本と向き合って
著者:有馬孝禮
出版社:学芸出版社
サイズ:四六
ページ数:240
発行年:2009.04
