多自然型川づくりを越えて
治水も環境も共に満たす川づくりとして、多自然型工法は90年代に急速に普及した。15年を経て、生態系への理解、現場の技術者の育成、河川用地の確保等、課題は山積している。そこで本書は、実践を踏まえた多自然型川づくりの基本をまとめ、さらに、自然と共生し、都市・地域の軸となる「空間としての川づくり」を提案する。
■目次
第1章 多自然型川づくりをめぐる経過と展望
・川づくり、河川整備の経過
この100年の川をめぐる状況の推移/この100年の川の変貌/20世紀後半の川の整備、河川管理の背景/多自然型河川工法の導入前の先駆的取り組み/河川法の改正
・従来の川づくり、河川整備の基本事項
河道の計画の視点(治水面からの視点)/川の動態/川づくり、河川整備の機会と河川管理
・従来の多自然型川づくりの基本事項
基本とされてきた事項/実施段階での配慮、モニタリングと改善/災害復旧・改良復旧工事での多自然型川づくり
・多自然型川づくりの問題点と今後の展望
多自然型川づくりの検証/河川用地という本質的な課題/多自然型川づくりを越えて
第2章 多自然型川づくりを越えて:自然河川工学からの展開
・川の構造と河川生物の関係
河川に生息する淡水魚類とその特徴/河川形態と生息環境の分類/河川内での魚類生息環境
・多自然型川づくりの生態学的な問題点
護岸/魚類生息施設としての水制工/正常流量と水深確保対策としての低々水路/魚道の設置
・自然河川工学論
・自然河川工学の実践
河道計画法線および断面形状の考え方/護岸の考え方/河川横断構造物(砂防施設、床止工、水制)の考え方/魚道(自然河川に学ぶ魚道形式など)の考え方
・自然河川工学の実践例
河道法線と断面の工夫/横断構造物と河川形態の創造/砂防・治山施設の改良/自然河川に学ぶ魚道計画
第3章 多自然型川づくりを越えて:空間デザインからの展開
・いい川とは何か
・河川の空間デザイン
・川の自然回復と空間デザイン実践事例
いたち川低水路整備/いたち川ふるさとの川整備事業:稲荷森の水辺/和泉川:東山の水辺・関ヶ原の水辺
第4章 多自然型川づくりを越えて:都市・地域、流域圏からの展開
・自然的空間としての川の利用と活用
・都市・地域の「空間としての川」の再生、利用
都市軸としての河川空間/親水空間としての再生/都市再生の要としての川の再生/今後の課題
・渇水、洪水、水質対策
激化する世界の水不足、洪水問題/新たな洪水問題/水資源問題
・生物のすみ場としての河川
エコロジカル・ネットワークの一員/川の区画と生物のすみか/水域と生態系のネットワークの保全/流域でのネットワークの保全
・自然と共生する流域圏・都市の再生
水循環(系)と流域管理/先進的な取り組みの事例/自然と共生する流域圏・都市の再生シナリオ/自然と共生する都市再生シナリオ/国の取り組み
著者:吉川勝秀、妹尾優二、吉村伸一
出版社:学芸出版社
サイズ:A5
ページ数:286
発行年:2007.04
