渋沢敬三と今和次郎 博物館的想像力の近代
戦前期に渋沢と今は、日本の生活や民俗を収集・展示して新たな価値観を発信する博物館の設立のために奔走する。その活動は戦後、国公立の博物館設立として結実した。2人の知の巨人が若き日に目指した夢とその道のりを、豊富な資料から浮かび上がらせる。
■目次
はじめに
本書の目的/これまでの研究の概要/政治と想像力/本書の構成
第1章 民俗博物館とは何か
1.名もなき人たちへのまなざし
出会い/石黒忠篤の仲介/挫折/アチックミューゼアム/北欧の民俗博物館
娯楽性と学術性
2.誕生とその背景
近代国民国家の成立と民俗博物館/展示される国土/博覧会から博物館へ
パリ万博の展示スタイル
3.民俗博物館への旅
鉄道がもたらした視覚体験/車窓と柳田国男/テーマパーク化する世界
旅する民俗学者たち/ラピッド・サーベイの方法
第2章 民具と民家の思想
1.常民の経ク物感の誕生と形成
「民」のものへの関心/おもちゃ時代からの脱皮/生物学の思考/分類への模索
生活の体系化/消費社会のなかの民具/皇室の博物館との対照性
2.民藝との距離
柳宗悦と民藝運動/民藝館をめぐって/岩手の旅の比較/民具、民家、民藝
3.美をめぐって
手作りへの関心/原点としての工業論/人類の進化と「工」/からっぽな態度
都市と田舎の接触/アジアと他民族へのまなざし/今和次郎と朝鮮/自然と美意識
第3章 青年団運動と民俗博物館 大日本聯合青年団郷土資料陳列所
1.青年と郷土研究
幻の郷土博物館/田沢義鋪と柳田国男/構想の具体化/今和次郎と渋沢敬三の関わり
開所式
2.民家の展示と郷土
民家展示の課題/二人の協力者/分布図をめぐる葛藤/民家と模型の制作
農家と住宅改善/建築史学と民藝運動との対比/軍国主義の展開と突然の閉鎖
第4章 紀元二千六百年と民俗博物館 日本民族博物館
1.国際文化振興としての博物館
皇紀二千六百年/交流と日本文化/建議までの流れ/民俗の外交
必要性と緊急性の論理
2.計画の内容と推移
高橋文太郎の支援/博物館のデザイン/将来に向けた展示/野外博物館の展示意図
戦争の影/一場の夢と相成候
おわりに
戦後への継承/文化財の民主化と国立民俗博物館の構想/一九七〇年代の進展
野外博物館から野外の博物館化へ/渋沢敬三の活動の意義/今和次郎の活動の意義
著者:丸山泰明
出版社:青弓社
サイズ:四六
ページ数:264
発行年:2013.12
