建築と破壊 思想としての現代
人びとはツインタワーの消滅を見たいと密かに願っていた。ロシア革命に端を発し、テロル・粛清・暗殺など20世紀の黙示録的大事件に脈々と通底する感情が、新世紀劈頭の9・11に収斂した。自意識の分裂という強迫観念に囚われた、ドストエフスキーからA・ウォーホル、D・アーバスらの果敢な営為に、空虚で寄る辺ないわれらの時代の気分を抉る、大胆で意欲的な文化批判。「マレーヴィチは、自ら絵画を終焉させ、あるいは文字通りの「ゼロの絵画」を描くことで、この分裂のもたらす空虚を表現した。」「それは二〇世紀に起きた黙示録的な出来事の不吉な予兆となった。だとすれば、マレーヴィチのそうした「白」は、いまも変わらず不吉な予兆を私たちに伝え続けているのではないだろうか。」(本文より)
■目次
・1 破壊すべきものたち
ウィトキンという写真家/奇妙なツイン/写真家の誕生/写真と大衆/自己分裂
・2 そこには何もない
顔のないポートレイト/ファクトリーの惨劇/鏡像関係/ゴールド・マリリン/チェコスロヴァキア人というものは存在しない
・3 斧と革命
庭の終焉/ソロヴェツキー島/美とテロリズム/死と都市/ぺテルブルグのような町は存在しない/夏の庭園
・4 白い狼と赤い狼
白い狼/虚勢威嚇/宗教的欲望/ロシア革命/デカブリストの宴/オデッサという都市/赤い狼
・5 絵画という亡霊
死のイメージ/高度からの視線/ただ、そこに写されているということ/心霊とトラウマ/戦場の光景/戦争神経症/記憶という亡霊/相互分析/絵画に戻るということ
・6 二羽の鳥と二つの塔
ソンタグの死/死の美学/原体験/未来の死/メランコリー/テロリズム/ハイとロー/倒錯したまなざし/捕獲すること/憂鬱性のカニバリズム//ラスト・ショット
・あとがき
著者:飯島洋一
出版社:青土社
サイズ:四六
ページ数:470
発行年:2005.12
