生きられたニュータウン 未来空間の哲学
ニュータウンから、近代の問いへと向かう。進歩と成長の時代にうまれた千里ニュータウンや湘南ライフタウンは、いまや老朽化が進み、荒廃しつつある。ニュータウンの終末以後、わたしたちは、どのような生活のための空間を創出し、生きることができるのか。本書は、この問いをめぐって、哲学、建築思想、文学などから示唆を得つつ、哲学的な考察を試みる。自らもニュータウンで生まれ育った気鋭の思想家による、今後の都市の生活空間の展望を開く画期の書。
■目次
・生きられたニュータウン
ニュータウンのエコロジー思考
現実感の希薄さ安部公房の『燃えつきた地図』
人工都市における欠乏/自然の訓致/瞑想と絡まり合い
・ニュータウンと自然
黒川紀章のニュータウン・湘南ライフタウン
黒川紀章の思想と方法・共生と原型
湘南ライフタウンの幼年時代/二つの境界・共生と混淆
・人工・超都市・集団性
ニュータウンに関する概念枠
人工化と崩壊可能性/超都市と放擲、静寂と作品化
諸さと集団性/閉塞と錯綜
・人工都市の空間
風景の不在、空間の実在/ニュータウンを歩く
真空と解体/集団的住宅地と新しい市民秩序
動きの不在と網の目の衰微/客体的な世界/匿名の都市
・空間の静謐/静謐の空間
空間の感覚/正気と静寂
都市の静寂 テユ・コールの『開かれた都市』
静寂からの作品
・巨大都市化と空間秩序
都市の巨大化と空間の操作/全体論的な空間秩序 浅田孝と高山英華
社会存在の論理 田辺元の社会哲学/都市像の変遷 相互連関の錯綜体へ
巨大化の果て/田辺元の空間論
・崩壊のふるまい/ふるまいの崩壊
超都市・崩壊・分解/空間の原型/荒廃
相互連関とふるまいの場/坂部恵の「ふるまい」論/小括
・ニュータウンの果て
廃屋と槇文彦の「群の空間」/多木浩二の「生きられる空間」
空間の外在性/更地と充満/ニュータウンの空間秩序の論理
空間秩序の発展 黒川紀章の思想/拡張の果て/気配と錯綜体/小括
・都市の物語 箱、錯綜、混淆
生活の悪化/集団性と詩的触媒/機械状の主体性/物語と都市
箱と脱出/箱と梱包/ハウス・イン・ニューヨーク
・静かな都市
身体と静寂/生成と形/生成の気配/ニュータウンン昼と夜
ニュータウンの時間/小括
著者:篠原雅武
出版社:青土社
サイズ:四六
ページ数:262
発行年:2015.12
