
米国のブラウンフィールド再生工場跡地から都市を再生する
米国北東部・中西部の衰退工業地域(ラストベルト)では、1980年代から土壌汚染を抱えた工場跡地が遺棄され、深刻な都市問題となった。土壌汚染の存在が隘路となり「塩漬け」になった工場跡地は、「ブラウンフィールド」と呼ばれ、産業を失った工業都市の衰退を加速させた。そのため、ブラウンフィールドの再生は、1990年代以降の米国の主要な政策課題となり、現在に至るまで手厚い再生支援が展開されている。
本書は、再生を支える政策と再生の現場である中小工業都市の取組を中心に、米国のブラウンフィールド再生の全容を描くものである。第一部では、先進州や連邦政府の関係者への取材を通して、「縦割り」や連邦・州・自治体の違いを乗り越えて環境保護と都市再生を両立する革新的な再生政策の形成過程を解説する。第二部では、環境問題に加えて人口減少と雇用喪失に立ち向かい、都市再生を実現したラストベルトの工業都市(マサチューセッツ州ローウェル・コネチカット州ブリッジポート・ニューヨーク州バッファロー)を事例に、「負の遺産」を「再生の資源」に転換した都市デザインの手法を分析する。
■目次
序章 工業都市の再生とブラウンフィールド問題
第1部 米国のブラウンフィールド再生政策
1章 米国の土壌汚染地対応の枠組み
2章 ブラウンフィールド再生政策の変遷
3章 ブラウンフィールド再生政策の実態
4章 ブラウンフィールド再生政策の特徴
第2部 米国のブラウンフィールド再生の実態
5章 米国北東部を対象とした事例分析の枠組み
6章 コネチカット州ブリッジポート市
7章 マサチューセッツ州ローウェル市
8章 ニューヨーク州バッファロー市
9章 ブラウンフィールドを抱える都市の再生
結章 環境保護と都市計画の連携が生み出した米国のブラウンフィールド再生政策
あとがき
索引
著者:黒瀬武史
出版社:九州大学出版会
サイズ:B5
ページ数:388
発行年:2018.03