歴史的環境保存論 稲垣栄三著作集 七
稲垣栄三著作集第七巻。経済開発から文化財を守る戦いを経て、社会・文化の成熟を背景に町づくりの重要なテーマとなった歴史的環境の保存再生について、常に時代の先端で思考し、執筆された意義深い論考の数々が集められている。民家から集落・町並み、近代化遺産、モダニズム建築、負の遺産まで、保存の価値・意味を論じる一方、世界における日本の文化遺産のオーセンティシティ等、保存哲学をも鋭く問う。
■目次
・第I部 保存対象の拡大 民家から歴史的環境へ
文化財としての民家とのその保存
明治建築の歴史的価値とその保存
文化財開発委員会(仮称)のパイロット・プラン
歴史的遺産の評価と再構成-保存問題への建築家の姿勢
開発と文化財
技術による日本の征服
集落・町並みの価値と保存
歴史的環境の保存をどう実現するか
道路と文化財、そして文化財としての道路
歴史的環境の保全-その意味とにない手
歴史的環境保全の系譜と展望
日本における伝統的民家・集落の保存
東京駅再生の論理
「東京」の象徴-東京駅
「近代化遺産」と煉瓦造建築
モダニズム建築の保存-ドコモモの運動と日本
・第II部 保存理念の再検討
イタリアにおける文化財保護の制度と思想
ミューズ幽閉
都市住宅の伝統-ウィーンで考えたこと
モニュメント保存の方法はどこまで有効か
修理と復原と活用-その理念の歴史
文化遺産のオーセンティシティをめぐる素描
文化遺産の保存と観光
・第III部 歴史的環境と住民の暮らし
見失われた価値の再評価
歴史的町並みの課題(「第一回町並みゼミ」記念講演)
歴史の痕跡尊重を
歴史的町並みとくらし
壊さない建築家と大内宿/共生の探求
・第IV部 その他(多様な保存対象、保存を支える仕組み)
あすにのこす飛鳥 きょうを悩む古京
脱皮したい博物館主義
歴史的環境保全における市民と専門家
対談・技術史の流れにみる環境観の変遷-稲垣栄三・松井三郎
建築物修理用資材の確保
職人の生き方
「帝国ホテルを守る会」のころ
蘇った首里城正殿-首里城正殿序論
想像力のゆくえ
アジア・太平洋地域文化財建造物保存修復協力事業について
・初出一覧
・解題 陣内秀信
・索引
著者:稲垣栄三
出版社:中央公論美術出版
サイズ:225×160
ページ数:466
発行年:2009.07
