建築のちから
建築家として、土木(社会基盤)の教授として、この間「島根県芸術文化センター」から「日向市駅」「高知駅」まで、ふたつのジャンルにまたがる息の長い仕事をしてきた内藤廣が「建築家は勇気を持って建築のちからを見出し、価値を問い直し、無数の人びとに望むところに目を向けるときではないか」と投げかける。
写真図版も掲載。
いま基本にたちもどって- 建築に何が可能か。
我々は建物の完成や品質や作品性にこだわりすぎていないか。建築の本懐はその誕生ではなく、時代と共に生きていく時間の中にこそあるはずではないか。渾身の問題提起の書。(帯オモテ)
どのような建物にも、「建築の力」は内在するはずだ。それを見出し、価値を問い直し、無数の人びとの望むところへ向けて行使すべきだ。そこに生まれるはずの何ものにも代え難い歓びは、名誉や自己満足や経済を超えて、建築家が設計に込めた努力に報いるはずだ。(本文より)
■目次
・1章 建築のちからをめぐって
建築の力 地球の裏側から考える
建築に何が可能か 三十五年目の建築論
反時代的考察
インナースケープを探して
川の流れと風の流れ
身体感覚だけでつくる
「施主道のようなものについて」雅樂倶顛末記
異なる価値があたりまえのように併存すること
伝統、思考、場所、時間、空間、今
密やかで過激な試み
街と共にあること/日常生活の場
既存部に負担をかけない自立した構造体をつくる
意図的に無為であること
・第2章 建築の広がりをめぐって
都市戦略としてのデザイン
都市再生は駅再生から
これがほんとの悪戦苦闘、日向物語
建築家に何ができるか
鰹節か維新精神か
書を捨てよ、町へ出よう
線から面へ-町に広がれるか
景観という戦略
知的財産権について
技術と景観
・3章 建築の言葉をめぐって
建築に思想はあるか
よそゆき超高層は不要
大切なものほど分かりにくい
建築の価値・賞の価値
罵る言葉
本郷キャンパスの現在
建築家は木を切るな 時間の重さに対する責任
絶望することはない、街に出よ
・4章 人のちからをめぐって
篠原修の居る風景
「山」と「家」
前川國男と時間
公正と陰影
遥かなる物語、括る視線
毒と薬
アアルトの窓辺
独立・勇気・祝福「ロヘリオ・サルモナの建築」展によせて
サルモナの後ろ姿
著者:内藤廣
出版社:王国社
サイズ:四六
ページ数:240
発行年:2009.07
