写真図説 イギリスの邸宅建築と庭園 [復刻版] 第3回 初期・後期ジョージアン様式およびイギリスの庭園 全10巻
第3回はジョージアン様式の邸宅45点を収録する2巻に、英国の代表的な庭園52点を掲載する1巻「イギリスの庭園」を含む。グランドツアーなどで学んだ、ヨーロッパ大陸やイタリア文化・芸術を吸収し成立していったジョージア期の芸術様式は、建築、家具、造園などの工芸美術で顕著であり、多数の写真入りで解説した本配本はイギリス文化史の全容の理解に特に貴重。
■内容
Vol.5 Period V Vol. 1 Early Georgian (1714-1760)
Vol.6 Period VI Vol. 1 Late Georgian (1760-1820)
Vol.7 English Gardens
■推薦のことば
近藤存志(フェリス女学院大学教授)
この度、イギリス(イングランドおよび一部ウェールズ)の邸宅建築と庭園に焦点をあててヘンリー・A・ティピング(Henry Avray Tipping 1855-1933)の手によって刊行された大型ヴィジュアル本、全10巻が『イギリスの邸宅建築と庭園』というタイトルの下に復刻されることになった。著者ティピングは、オックスフォード大学クライスト・チャーチ出身の著名な建築史家・建築評論家であり、1907年から亡くなる1933年までイギリス上層階級の必読誌であった雑誌『カントリー・ライフ』の建築部門の編集主幹を務めた人物である。ティピングはまた造園家としても広く知られ、今日、イングリッシュ・ガーデンが西洋庭園史に確固たる地位を占めるに至った立役者の一人として評価が高い。そうしたティピングの建築史と造園芸術の両分野での功績に光をあてるべく、今回の復刻では、約8世紀にわたるイギリスの邸宅建築の実例を扱った彼の代表的著作『イングランドの邸宅』(English Homes)全9巻に、イングランドの庭園52例を取り上げた『イングランドの庭園』(English Gardens)を加え、全10巻として刊行される。
『ティピング著作集』とも呼び得るこの充実した復刻版では、ノルマン王朝時代から後期ジョージ王朝時代までのイギリスを代表する300以上の邸宅建築と庭園が網羅され、4600点を超える写真と図面とともに、それらの美的、歴史的、文化的価値が解説されている。それは、自らも広大な邸宅を所有していたティピングというひとりの優れた建築史家の建築・庭園芸術の鑑賞の記録であるとともに、20世紀初頭、エドワード王朝時代の上層階級を中心とした建築芸術、造園芸術に対する広範な関心と美的趣味の一端を明らかにしてくれる。
当時撮影された写真の数々も、今日類例の乏しい歴史資料としての価値が高く評価されているもので、そうした優れた視覚的資料が数多く本書に収録されている点も見逃せない。インテリアや調度品、庭園を含め、イギリス芸術史に燦然と輝くイギリス邸宅建築の傑作を時代別に取り上げたティピングのライフワークは、イギリスの建築史、美術史、庭園史の研究にのみならず、イギリス文化史の全容を理解するうえでも大いに刺激となるであろう。
著者:ヘンリー・A・ティピング
出版社:エディション・シナプス
サイズ:A4
ページ数:1260
発行年:2015.09
