菊地宏 バッソコンティヌオ 空間を支配する旋律 現代建築家コンセプト・シリーズ 15
菊地宏が建築を志すことになった90年代から、「白い建築」が注目を集めていた。建築が白ければ模型も白く、平面図では色を表現する余地がない。菊地には、建築をめぐるこの状況は、モードのうえにモードを重ね、より視野を狭めて進んでいるように思えた。なぜ、これほどまでに建築は自由を奪われてしまったのか、この呪縛から離れ、豊かな空間をつくることができるのだろうか。
いくつかの建築設計事務所で実務を重ね、2004年に独立した菊地宏の設計活動は、こうした問いと深部から向き合い、歴史や自然のなかに範を探して、人間の生活のすみずみを豊かにすべく照らしていくものとなった。空間の豊さは、自然のリズムと協調することから生まれてくる。環境、方角、季節、時間、光、色、菊地はそうした要素と人間をどのように結びつけられるかを丁寧に探り当てる。
本書では、筆者が長年にわたって撮影した80枚ほどの写真が、言葉と同様に建築のあり方を示す。それらは筆者の建築の模索の途中で撮影されたものであり、いまでも筆者の価値観を支える建築と空間のヒントに満ちている。建築の最新モードから離れて、豊かな空間についてあらためてじっくりと考えるための一冊。
■目次
はじめに/色がわからない/白色という呪縛/白色からの脱却
外から飛んでくる光/色が見えた日/頭上の不思議なもの
振り切れた速度間の間で/複雑さの中で/光の届く先
暗い色の中で/光と人間の立ち位置/苦手な関係
人と光は別のところから/数センチの世界での光の戯れ
空間を潰す/奥の深い空間/明るさが暗さを呼ぶ
壁が明るさを決める/鮮やかな色/色は、色と色の間に
色の幅はまちまち/方角によって色は異なる/時間によって色は異なる
太陽を作る/頭上から光を入れる/大きなリズム
物の照らされる順番/遠いものと近いもの
著者:菊地宏
出版社:LIXIL出版
サイズ:210×150
ページ数:128
発行年:2013.06
