建物疎開と都市防空 「非戦災都市」京都の戦中・戦後
終戦直前、我国の大都市の実に六一万戸の建物が強制的に撤去された。木造家屋が密集し制空権を失う中で、空襲から都市を守るには、もはや火災の 種になる家屋そのものを破壊しなければならなかった。「破壊防空」がもたらした、市民生活と都市の空間構造への今日にまで至る、物理的・ 心理的影響に初めて学術的に迫る意欲作。
■目次
・序章 建物疎開(強制疎開)と近現代史研究
わが国の民防空と建物疎開
戦争体験の記録・歴史化のなかで等閑視された建物疎開
建物疎開研究の本質的意義と学際的アプローチの必要性
京都の建物疎開を研究する意義
本書の目的と意義
・第1部 民防空と建物疎開
第1章 近代戦における航空機の発達と民防空
・世界の民防空の歴史とその概念
欧州の民防空/ドイツ・イタリアの民防空
建築物の防空 ほか
・日本の民防空
アジア・太平洋戦争下の日本の都市空襲
防空法の改正と防空計画 ほか
コラム1 日本の大都市の人口集中率と地形的特徴
第2章 京都の民防空
「近畿防空演習」(1934年)の実態
防空計画の設定―防空法第1期(1937年4月~1941年11月
国際情勢の変化と防空計画の対応
防火・消防の重視とその現実 ―防空法第2期(1941年11月~1943年10月)
民防空への「疎開」の導入と空襲の現実化 ―防空法第3期(1943年10月~1945年8月)
第3章 建物疎開と民防空
内務行政としての民防空
建物疎開の法制
帝都東京の建物疎開
・第2部 建物疎開と京都
第4章 京都における建物疎開の実施
京都の建物疎開執行機関
大都市空襲以前の建物疎開
大都市空襲以後の建物疎開
第5章 建物疎開を生き抜いた住民たち
除却および移転の実態
疎開者への補償
コラム2 両側町
コラム3 学区
第6章 建物疎開の戦後処理 ―都市空間・都市意識への影響
京都における建物疎開の戦後
疎開者に対する戦後法的補償
現代京都に見られる建物疎開のひずみ―3地域の事例
いまも残る,建物疎開の物質的・空間的・精神的影響
・京都の戦中・戦後を論じるもう一つの意味 -まとめに代えて-
著者:川口朋子
出版社:京都大学学術出版会
サイズ:A5
ページ数:308
発行年:2014.04
