
ナチズムの芸術と美学を考える 偶像破壊(イコノクラスム)を超えて
ナチズム芸術/モダニズムという二項対立は戦後の言説によって強く規定されてきたのではないか。ナチズムの芸術表象について踏み込んで分析し、ナチズム芸術をもっぱら退行的とする議論やナチズムのイデオロギーからのみ語ろうとする単純化された議論を超えて、ナチズム芸術の多層性と同時代性、さらには現代性を明らかにし、ナチズムの脱神話化をはかる。
■目次
・はじめに
・第一章 戦後におけるエミール・ノルデの「非ナチ化」と神話化をめぐって
ノルデをめぐる問い
ノルデの反ユダヤ主義
ノルデとナチズム ― 第三帝国における「ドイツ美術」をめぐる議論
「描かれざる絵」の神話
終戦ー冷戦期におけるドイツ美術の非ナチ化と国際美術復帰への努力
・第二章 第三帝国の「戦争画」を考える
戦後における第三帝国の「戦争画」の行方とそれをめぐる問い
第三帝国の「戦争画」プロジェクトについて
第三帝国の「戦争画」の目的と方針
第三帝国の「戦争画」作品
第三帝国の「戦争画」とナチズムのイデオロギー
・第三章 パウル・ルートヴィヒ・トロースト―ナチズム建築の起源をめぐって
ナチズム建築の創始者トロースト
「総統の第一の建築家」になるまで
総統と建築家
トローストの「汽船スタイル」
「汽船スタイル」からナチスの建築へ
保守とモダンの間で
・第四章 アルベルト・シュペーアの「廃墟価値の理論」
ナチズムの建築と廃墟への想像力
シュペーアの「廃墟価値の理論」と第三帝国の「建築絵画」
廃墟の時間性について
シュペーアの建築における時間性について
・第五章 ナチズムと崇高の美学
ナチズムについて崇高を語れるか
崇高と政治 ― 近代の崇高論の限界
ナチズムにおける「政治の美学化」 ― 「美」か、それとも「崇高」か
ナチズムと崇高
・あとがき
著者:石田圭子
出版社:三元社
サイズ:A5
ページ数:322
発行年:2023.10