誰のための、何のための建築創造か
本書は常に生活者の視点に立ち、地域に密着して住む人・使う人のための建築とまちづくりを追求しながら昨年、惜しまれつつ逝った建築家、萩原正道の遺稿集である。大手ゼネコンを飛び出し街の設計事務所に参加した萩原が、ゼネコン在職中には無縁だった地域からの多様な要求に直面しながら考えたこと、また建築に携わる若い人に伝えたかったことをまとめた一冊。そこには、地域に根ざし人びとのために生きた鮮烈な建築家像が浮かび上がって来る。通常の遺稿集のように知人・親族に愛蔵されるだけでなく、地域と建築の関係について考える、すべての建築人に向けられた必読の書。
■目次
・まえがき 深く広がる建築の仕事 本多昭一
・第1章 建築人としての目標
地域の生活者とつながる建築活動
・第2章 地域に育まれる建築人‐地域に根ざす設計事務所の役割と職能
1 地域に根ざす建築活動/2 生活者の要求に応えながら‐地域に根ざす建築活動の現在の到達点/3 コミュニティベースの空間づくり‐地域に根ざした建築活動を進めてきて/4 中小設計事務所のあり方をさぐる‐多様化する活動と業務/5 設計事務所の協同について/6 まちを改善するコモンの仕事とその報酬/7 「協同」の理念で21世紀の展望を
・第3章 象地域設計での実践
1 コーポラティブハウス/2 共同建替え/3 まちづくり/4 施設づくり/5 住まいづくり/6 技術者の立場からみたマンション問題と修繕計画の必要性
・第4章 建築と社会とのかかわりに対して
1 地域と住宅設計活動/2 建築の耐久性と建築廃材問題を考える/3 暮らしをおびやかす建築市場の拡大策/4 誰のための、何のための建築創造か
・第5章 建築に携わる人に伝えたいこと
1 建築技術者のあり方への模索/2 民衆と建築との緊張感‐「凧の糸」に学ぶ/3 建築と社会を弁証法的に考える
・附 萩原正道の足跡
・あとがきにかえて 私のなかの萩原正道 萩原幸
著者:萩原正道
出版社:東洋書店
サイズ:A5
ページ数:220
発行年:2006.08
