錯乱の日本文学 建築/小説をめざして
「総力戦」の時代におけるデザインと代表=表象をめぐる、大江健三郎、村上春樹、小島信夫、大岡昇平を中心にした小説と、磯崎新、原広司、伊東豊雄、コールハースらの建築とのキアスム。
■目次
0. イメージは無料ではない
・「住宅」の誕生
・高さと広さ 空間的包摂(マンハッタン、東京)
・「デザイン」としての文学
1. 小島信夫の「家」
・住宅あるいは崩壊のアレゴリー(モダニズム/住宅、
『抱擁家族』の家)
・住宅の変容(女中の消滅、nLDKの誕生)
・近代のプログラム(nLDKの「汚れ」、近代末期とnLDK、
住宅の解体/増殖)
・近代の内破(鏡像としての江藤淳、、『別れる理由』の相似、
増殖する時空間、メタフィクションというトリック)
・近代の帰結(『各務原・名古屋・国立』のゆらぎ、
透明性というアナクロニズム)
2. 大岡昇平の「東京タワー」
・バベル333あるいは破局都市
・東京の1958年(「東京タワー」の非在、見えない都市・東京)
・フィクションと真実(真実という残余、散文としての祈り)
・記号の散逸(全体とその外、体系としての日本/軍、
崩壊過程としての戦場)
・芸術あるいは死の擬態(知覚の変容と芸術、仮死の都市)
3. 大江健三郎の「塔」
・塔という背理
・塔/範列的分析(大江健三郎の三つの塔、原広司による塔、
ユートピアとしての塔、樹木の分身としての塔)
・塔/歴史的分析(ユートピアの解体(1960年代)、ポストモダンのユートピア
(1980年代)、聖なる塔/俗なる塔(1990年代))
・福島第一原発事故と塔(「懐かしい年からの返事は来ない!」、
ふたたび治療塔の彼方へ)
4. 村上春樹の「システム」
・デタッチメント/自閉/穴
・1985年のウロボロス(「システム」の登場、『世界の終りとハードボイルド・
ワンダーランド』の供犠システム)
・伊東豊雄を導入する(「中野本町の家」とポストモダン空間、
「中野本町の家」と仮死空間)
・同時代人としての柄谷行人
・システムからデザインへ
・従順なサーヴァントたち、
・ウィリアム・モリスの子どもたちはみな踊る
(モリスから「トータル・デザイン」へ、越権するデザイン、
「かえるくん」の定言命法)
・批評はいかに可能か
5. 大江健三郎の「総力戦」
・廃墟(SINとARATA、廃墟の起源)
・戦場(第一の破壊構想、戦場としての都市、大阪万博と「偶像」)
・住宅(総力戦と住宅、建築/小説の誕生)
・徴候(第二の破壊構想、新たな総トータル・デザイン力戦へ)
著者:石川義正
出版社:航思社
サイズ:四六
ページ数:340
発行年:2016.04
