多田美波―光、凛と ゆれる
戦後日本において抽象彫刻家・造形作家として活躍した多田美波(1924–2014)の大規模個展の公式図録。
生涯でおよそ200点の彫刻作品と、500点に及ぶ建築関連作品を手がけた多田は、美術館という枠にとどまらず、公園、駅、市庁舎、ホテル、劇場など、都市のさまざまな場所に作品を残し、長年にわたり人々の生活空間の一部を形つくってきました。空に向かってすらりと伸びていくようなステンレスの彫刻や、自然の景観に心地よく馴染むガラスやアクリルの彫刻、あるいは色とりどりの光を内包する「光壁」など、その表現は素材・スケールともに多岐にわたります。
多田は、高度経済成長期を背景に普及した工業素材や加工技術を、芸術表現に積極的に取り入れた先駆的作家のひとりです。制作の手跡を感じさせない無機質な表面に、光の反射や透過、屈折、揺らぎといった有機的な要素を取り込み、移ろいゆく周囲の環境や鑑賞者の動きと呼応して表情を変える造形を生み出してきました。なかでも多田は、光を単なる効果ではなく造形の中心として据え、美術、プロダクトデザイン、インテリア、建築を横断しながら空間そのものに働きかける実践によって、同時代の潮流のなかでも独自の立ち位置を築きました。その根底には、人間にしか創出できない美としての「第二の自然」を探究する姿勢が貫かれています。
本展では、多田美波研究所の全面的な協力のもと、初期の絵画、各時代の彫刻、作家本人が「光造形」と呼んだシャンデリアを含む照明の作品、およそ70点に加え、建築造形のパーツ、写真、スケッチなどのアーカイブ資料を展観し、約70年にわたる多田美波の仕事をあらためて俯瞰します。本図録では、豊富な図版とコラム、4本の論考から多田の軌跡を多角的に考察するとともに、年表などの充実した資料とともにその活動の遍歴を紐解きます。(展覧会概要より)
■目次
・ごあいさつ
・謝辞
・図版
コラム
生い立ち/変電所をテーマに描く/初のレリーフ作品<炭鉱>
平面から立体へ 1960年代の制作/素材について/「環境芸術」の時代
多田美波芸術研究所/野外彫刻/照明器具/光造形/建築とともに/作品をケアし、残すこと
・論考
多田美波の進化ー美術史的観点から 由本みどり
光の彫刻、あるいは現象としての世界ー多田美波の造形思考 小高日香理
多田美波芸術に思うー建築との関わりをめぐって 細田雅春
作品を遺すためのいくつかの考察ー多田美波の野外彫刻と光造形をめぐって 田村万里子
・年表
・主要参考文献
・掲載作品クレジット
・写真クレジット
著者:
出版社:torch press
サイズ:257×182
ページ数:232
発行年:2026.09
