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時の居場所 軽井沢の家

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本書は建築家の堀部安嗣が設計した「軽井沢の家」(2002)を主題とした本であり、4年前に出版された「memento mori 伊豆高原の家」(絶版)につづく2冊目の堀部の作品集。

● デザイン

表紙はデザイナーの北川一成がこの家を訪れてもっともインスパイアされたという地下のテラスからイメージされている。暗く湿ったコンクリートのギャラリーを通りぬけると輝く樹海が眼にとびこんでくる。表紙にみられる漆黒の闇のなかで滲むような緑青色の文字。北川の網膜に写しだされたこの家の原風景ともいえる。

●構成

本のかたちは「軽井沢の家」にみられる強い水平性から想定された。全体の構成は,家をはじめて訪れた人の動線や視線の動きを表し個々の頁のレイアウトでは,それぞれの空間がもつ柔らかさや浮遊感,あるいは重厚感や湿度などを示している。

● 写 真

およそ1年をかけて写真家の梶原敏英が撮りためたもののごく一部を紹介している。プロローグは静かな冬の世界から始まり,華やかな春,夏を経て,エピローグには夜の帳がおりる。

● 文 章

批評は,アントニン・レーモンドの研究や『a+u』の編集者としても知られるケン・タダシ.オオシマが執筆した。ジョセフ・リクワートの「原始の小屋」や鴨長明「方丈記」などを引用しながら,広く深い視野からこの家の根源的で豊潤なありようを示している。また堀部とオーナーの鈴木義和がエッセイを寄稿した。雄大な浅間山と眼下に広大な樹海をのぞむその土地には、大きな栗の木があった。よほどいい場所にあるのだろう、訪れる人はみな、崖っぷちにたつ木の下へ向かい、木に寄り添いながら、しばし美しい風景を見入る。ここには建物ができる前からすでに人の居場所があった。それは大昔からずっとあって、みな同じ気持ちで同じ風景を見ていたのではないだろうか。栗の木を残しその傍らに、建物をたてるというより、木に寄り添う人びとをやわらかく包む,そんなものをつくりたいと思った。

堀部安嗣「人と場所と時をつなぐもの」より抜粋

『時の居場所 軽井沢の家』

鈴木義和&鈴木葉子,2003,pp.13-14

■限定1000部和英併記

写 真   梶原 敏英 

批 評   ケン・タダシ・オオシマ

執 筆   堀部安嗣 鈴木義和

翻 訳   鶴見樹里 木下壽子

デザイン 北川一成 松本悟史

制 作   グラフ

著者:堀部安嗣、鈴木義和

出版社:森オフィス

サイズ:150×210

ページ数:48

発行年:2003.10